"地球温暖化"残された人類存続への道
温暖化が進むと、乾燥している場所はさらに乾燥することが予想される。どのくらいの土地が干上がり、荒れてしまうのか?
今、地球環境の急激な変化が私たちに降りかかろうとしている。なかでも「地球温暖化」が引き起こす危機は、地球上すべての生物に対してもたらされるものである。
たとえば、気温が上昇することで、海水の温度が上がり、体積が膨張し海面が上昇する。その上、極地方の氷が溶け海面上昇に拍車をかけ、海岸平野に広がるアジアの水田地帯は海水の被害を受けて深刻な食糧不足に見舞われる。日本沿岸の工業地帯も大打撃を受けるだろう。また、灌漑に頼る北アメリカの穀物地帯では、雨量が減ることや機構が亜熱帯化することで砂漠化が進み小麦の収量が減って、世界の農業に大きな変化を与える。他にも、ハリケーンや台風が大型化するなど、私たちの生活そのものへの影響も計り知れない。
このような影響は「地球温暖化」がもたらすほんの一部の変化なのだ。
温暖化の影響は私たちの未来にはどんな影を落とすのだろうか。ACT-1「食べ物の値段が上がる」発展途上地域を中心に多くの人々が飢えに悩まされる温暖化が進むと、具体的にどんなことが起こるのか。人口が増え、それぞれが生活の水準を上げると、食糧がより多く必要になり、エネルギーや資源の消費も増える。これに対応するために、肥料をどんどん投入して、耕地を何度も使わなければならなくなる。また、森林破壊も進む。そのことが、二酸化炭素をはじめとする大気中の温室効果ガスを増やすことになる。これが今の私たちの生活をつくっている流れなのだ。
直接的な影響は、光合成が活発になること。「一般的には収穫量は上がります。メロンの温室栽培では、ハウスの中の二酸化炭素の濃度を上げているくらいです。実験では、二酸化炭素が倍増した場合、十分に肥料を与え、病虫害を予防すると、収穫量が30%近く上がります。しかし肥料をやらないと上がらないのです」
収穫量を上げる条件は、耕地がよく整備され、農薬や肥料があること。「小麦、とうもろこし、大豆、米に関して、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、オースラリアという主要な輸出国のほとんどは、高温や乾燥で収穫量が減るといわれています。逆にシベリアやカナダの針葉樹林地帯が農地として活用できるようになります。世界全体では過不足はあまり大きくならないと予想されています。ただし、新しい耕地を作るには莫大なコストと時間がかかることは確かです。ということは農産物の高騰を招く心配もあります」ACT-2「多発する自然災害」30年に1度という"異常気象"が異常でなくなる「気象庁では30年に1回以下しか起こらないということを基準に、異常気象と言っています。温暖化が進むと、異常に気温が高くなったり、大型台風などが頻発する可能性があります。異常気象が異常でなくなることが考えられます」雨や台風が増え、海面が上昇する気象の変化が、現実の生活にはどう響いてくるのだろうか。「道路や建物、交通システムなどさまざまな設備は、今の気象に基づいて作られています。その前提がくずれるということです。温暖化が急速に進むと、対応できません。強度や寿命が変わってしまいます」。これは、想像すると怖い話だ。
ACT-3「生存競争の果てに」死ぬか、逃げるか、耐えるか。すべての生物に選択を強いる「すべての生き物は、環境の変化に対して、自分が適応できる環境へ移動する、その場で適応できるようにみずからを変化させる、逃げることも適応することもできずに死ぬ、の3つの立場から選択せざるをえないでしょう」「植物や動物の分布は秩序がはっきりしています。どこかひとつがくずれると、全体がおかしくなってしまうのです」
動物といえども、その体力には限界があるし、途中に街などの障害物があれば、移動は簡単ではない。また、「ある林をねぐらに、いくつかの森林の間を飛んでいた鳥がいるとします。もし真ん中にある森林がなくなれば、今までよりずっと長距離をいっぺんに飛ばぬばなりません。鳥によっては移動が困難になることもあります。その鳥が来なくなれば、植物や虫やその鳥を食べようとしていたほかの動物にも影響が出るんですね。林がひとつなくなるだけで、いろんなことに変化が起きるんです」。周りを海に囲まれた島に住む動植物は、温暖化によって絶滅が心配されている。
移動せずに新しい環境に適応できるかどうかについては、「何といっても時間のかかることです。温暖化のスピードに間に合うかどうかは分かりません」。となると、死や絶滅の道をたどるしかない。植物が移動すると、動物にも変化が起こる。そこに残ったものは、新しい侵入者と戦い、移動したものは侵入者として戦うことになる。
「人間を含め、どんな動物も単独では生きていけない。人間は自然を利用するだけでなく、生態系の一員であるという発想を持って、エネルギー消費を抑えるよぅに努力しなければならない。自然の秩序はいったん壊すと元にはもどれないのだから」。温暖化は、すでに個々の生き方の問題になってきた。
ACT-4
「快適な生活のツケが回ってくる」"グローバルコモンズ=地球公共財"の存在がようやく分かってきた
「環境問題にはツケをどこに回すかということがつきまとう」と言う。「自分の出したゴミを別の場所に捨てるのは、ツケをよその地域に回していること。ある工場で二酸化炭素を出さないとしても、その工場が電気を使っているとすれば、その電気を作るための二酸化炭素は別の場所で出ているのです。次の世代がなんとかしてくれるだろうというのも、ツケ回しのひとつ」。ツケ回しをやめるには、地域や国の間で協力が不可欠だが、現実はなかなかそうはいかない。「人類はやっと地球は有限だと気づいたのかもしれません。地球環境は公共財であるという意識がようやく芽生えて来たようです。一人ひとりが生活を変えていくことが問われています。この温暖化の問題をきっかけに、エネルギーを少しでも使わない、そしてほかにツケを回すことがない、エコロジカルな新しい文明ができるのではないかと期待しています。お母さんたちには、正しいと思ったことをきちんと子どもたちに教えていただきたいですね」怖いのは、人間の健康に対しての予想。熱波、干ばつによる栄養不良、洪水によって衛生状態が悪化する、より使用量が増える化学肥料や農薬の影響などなど。「気温が30度を超えると、脳卒中による死亡が増えるというデータがあります。また、マラリアや住血吸虫病(肝硬変などを起こす)など、従来は暑い地域に限られていた病気が増えるでしょう」
海面の上昇や干ばつで土地がなくなると、環境難民があふれ、政治的な大問題になる可能性もある。
出典:マナメッセ総集編'95(中略あり)


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